社会福祉士国家試験情報第36回 社会福祉士国家試験 科目別分析【専門】

科目別分析【専門科目】

社会調査の基礎

 問題84の基幹統計調査については、過去問や各テキストで学習していれば回答できる問題である。問題85は社会調査の倫理、問題86は事例問題ではあるが、標本調査の母集団についても過去問やテキスト学習していれば解ける内容である。問題87は質問への回答を他計式で記入する社会調査について問われたが、他計式はテキストによっては他記式と書かれているものもあるので、少し戸惑ったかもしれない。他計式の意味をしっかり学習していれば回答は容易であるが、適切なものを2つ選ぶ問題であったので注意が必要である。問題88は尺度水準に関する問題で、それぞれの特徴や特性を理解しておくことが求められる。問題89 は面接法について、問題90は記録の方法とデータ収集法について適切なものを2つ選ぶ問題だった。<br> 今年度も社会調査における基礎的な内容が多く、毎年出題されている部分も含め、しっかり基礎的な学習を積み重ねていくことが高得点につながる内容であった。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

相談援助の基盤と専門職

 出題傾向としては、例年同様の範囲からの出題であった。今年は受験生一般の平均的な学習習熟度で解答できる問題が多く、容易に解答できた受験生が多かったのではないだろうか。
 個別の出題を見ると、問題91は例年どおり社会福祉士法の規定からの出題であった。問題92の事例問題では、メゾレベルの対応とは小集団・組織に対するソーシャルワークであることを理解していれば解答を導き出せた問題である。問題93は恒例の「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」からの出題であり、しかも定義の冒頭部分の文章であることからしっかりと記憶していた受講生が多かっただろう。問題94では「障害者の自立生活運動」の内容からの出題であったが、ノーマライゼーションの理念を理解していれば容易に解答できた問題であった。問題96の事例問題では、スクールソーシャルワーカーの業務を理解していれば解答できた問題である。最後の問題97で戸惑った受講生もいたと思われるが、シュワルツによる「媒介機能」が、グループワーク理論モデルの「相互作用モデル」であることを理解していれば、自ずと選択肢5を選ぶことができたであろう。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

相談援助の理論と方法

 例年通り21問の出題であり、出題基準の大項目のほぼ全てから幅広く出題されている。現場実践の勘のみでは解答できない出題が多く、特に事例問題7問は、知識に裏打ちされたうえで考える姿勢が求められていると言える。全体的にきちんとした準備が必要な設問が多く、出題範囲を丁寧に学んでおく必要があると思われる。
 問題98はシステム論に関する正しい知識が求められる。問題99から問題101は実践モデルやアプローチに関する問題であるが、細部まで学んでいないと解答できない問題であった。問題102から問題105までは相談援助の過程についての標準的な問題である。問題106は相談援助関係についての出題であり、様々な技法について正確な理解が求められる。問題107はケアマネジメントについての基礎的な出題である。問題108はコミュニティオーガニゼーションについての出題であり、難しかったと思われる。問題109はグループワークについて、問題110はスーパービジョンについて、問題111は記録について、問題112は個人情報の出題であり、幅広い正確な知識が求められる。問題113は事例分析についての出題で難しかったと思われる。問題115は面接技術についての基本的な出題であった。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

福祉サービスの組織と経営

 例年通り科目別出題基準の大項目全てから満遍なく出題されており、全体的にはそれほど難しい問題はなかったが、中には選択に迷う出題も見られた。
 問題119は頻出の社会福祉法人についての出題である。基礎的な知識があれば対応できたであろう。社会福祉法人については問題123でも問われており、重要項目と言えよう。問題120は組織の基礎理論についての出題であり、組織論の主要人物を押さえておけば充分対応可能である。問題121は集団の力学に関する問題であり、コンフリクトやチームについても問われている。問題122は福祉サービス提供組織の財源に関する出題である。今年も昨年に引き続き財務諸表についての出題はなかったが、この設問では幅広い知識が求められており、若干難しかったかも知れない。問題123は組織の運営に関する出題であり、用語の知識とともに社会福祉法人についての知識も求められている。問題124は事例問題であるが、結果として人材育成についての知識が問われており、基礎的な知識があれば正答できたと思われる。問題125は育児・介護休業法についての出題である。選択肢2は「出生時育児休業」についての記述であり、これを選択した受験生もいたかも知れない。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

高齢者に対する支援と介護保険制度

 出題頻度の高い問126の「高齢社会白書」、「問127の「高齢者保健福祉制度の発展過程」は今年も出題されており、押さえていた受験生も多いのではないだろうか。また問131も高齢者に関連する制度、施策に関する知識を問われる問題であり、例年と同様な傾向だったのではないか。昨年は出題されなかった問135の高齢者虐待防止法について、やはり今年は出されており基礎を捉えておけば回答できたのではないかと思われる。事例問題として昨年は2題だったが、今年は問128,問132、問134の3題であった。地域包括支援センターの社会福祉士、医療ソーシャルワーカーとしての社会福祉士の役割はもちろんだが、支援者本人を取り巻く家族支援の目線も求められる問題となった。問129は出題頻度が高い介護技術に関してであり、疾患から障害の様子がイメージ付けられれば答えられたと思われる。問130の福祉用具については介護保険法の「貸与」というポイントに絡めて出題された。問133は「介護福祉士」という資格に特化した問題が出題され、困惑した方もいたかも知れないが業務独占ではない資格であるがゆえの専門性や役割の理解というポイントで捉えられれば回答できたのではないかと思われる。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度

 特筆すべき点として、児童相談所の活動、被虐待児童の保護及び社会的養護について直接触れた設問が無かった事が挙げられる。関連する問題142についてはそれらの知識も求められるが、ここ数年の傾向と明らかに異なっている。但し、この点を除けば出題範囲に偏りもなく、難問・奇問のないバランスの取れた出題であった。運任せになりがちな統計問題(問題136)も、社会問題全般に興味を持っていれば正解を導き出せる選択肢になっていた。他の問題も、テキストに目を通している程度の学習で消去法により正解にたどり着けるようになっており、普遍的かつ基礎的な知識を問うべき国家試験の出題としては適切であったと言える。令和6年度には一時保護に関する司法審査の導入、市町村こども家庭センターの設置(子ども家庭総合支援拠点と子育て世代包括支援センターを見直し)、困難な問題を抱える女性への支援に関する法律の施行等が控えており、関連する問題を出題しづらかったという事情も考えられる。次回以降は出題される可能性が高く、来年度受験者は今回の出題傾向にとらわれずに準備が必要であると考えられる。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

就労支援サービス

 4問のうち、障害者に関する問題が2問、公共職業安定所(ハローワーク)に関する問題が2問であり、第35回、第33回で出題された働き方に関する用語については、今回出題されなかった。また事例問題が1問あった。  
 問143は、障害者の「就労定着支援」に関する問題で、サービスの利用対象者や、サービス内容についての基本的な理解が必要である。問144は、「障害者雇用促進法」における、一般事業主(常用労働者100人以下)についての問題であり、常用労働者100人超の企業との違いについて理解しておくことが必要である。
 問145は、「公共職業安定所(ハローワーク)」の業務についての問題であった。ハローワークは、無料職業紹介事業の機能があるが、今回の試験では無料職業紹介事業の許可について問う問題が出ており、問題をよく読み理解する必要がある。問146は「公共職業安定所(ハローワーク)」の対応や、うつ病からのリワークについて問う事例問題であった。障害者就業・生活支援センターが、就労面及び生活面における一体的な相談を実施する機関である事の理解が必要である。
今試験は、基礎的な内容であり、過去問を繰り返し解き、基本的な事項を押さえれば解ける問題であった。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

更生保護制度

 過去の出題を見ると、例年「更生保護制度の概要」と「更生保護制度の担い手」からの出題が圧倒的に多く、その意味では今年もその傾向は踏襲されていたと言えるだろう。また、「医療観察法」の中からの出題も比較的出題の多い範囲からの内容である。問題150の刑の一部の執行猶予についての問題では、「更生保護制度の概要」というより司法の分野を網羅した出題になっており、第37回からの新カリキュラムによる試験において「刑事司法と福祉」という科目に変更となることを視野に入れての出題だろうか。この問題については、刑事司法手続きの流れを理解していれば回答できる問題であった。
  個別の出題では、問題147では仮釈放の手続きを事例問題として出題しているため、解答に迷った受験生がいたのではないだろうか。しかし、焦らずに考えれば解ける問題であった。問題148は保護司の基本的な業務からの出題、問題149は社会復帰調整官の基本的な業務からの出題であった。いずれも、奇問・難問ではなく、確実に学習を進めてきた受験生であれば解答できた問題であろう。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会