赤マル福祉は、福祉の仕事をめざす人を応援し、介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士国家試験の合格をサポートします。

HOME>福祉の仕事人インタビュー11

福祉の仕事人インタビュー

福祉の仕事人インタビュー11

作家・介護福祉士 安東 茂樹さん

作家・介護福祉士 安東 茂樹さん

●プロフィール

横浜市在住
2001年 無資格・無経験で特養介護職員となる。
2003年 児童文学「神さまの贈り物」を出版
2004年 日本児童文学者協会入会
2005年 介護福祉士資格取得
2007年 実習教育担当 特養介護主任となる。
2012年 小説「潮風の行方」を出版 介護職を退職
趣味は山登り、神社巡り、車、バイクなど

●作品あらすじ紹介~「潮風の行方」~

 主人公である介護実習生の賢治は、実習に入る直前に同じ介護学生の彼女から、介護に対する考え方の違いがきっかけでふられることに。
そして実習の現場で直面する絶望的なまでの現実…葛藤と悩みを抱えて過ごす中、施設で出会ったこれまでとは一味違う介護主任の川島さん、そして魅力的な先輩職員である春菜さんとの出会い。物語は、施設で担当することになった無口な老人男性と、賢治の母そして祖母の運命も絡み合いながら、湘南の海辺の美しい描写とともに進行します。

最初に、介護職に就こうと思われたのはなぜですか。

 介護職に就く以前は、車の用品開発やモーターボートの整備などをして働いていて、売り上げに追われたりしながらも、自分なりにかっこいいと思ってやってきたんですが、祖母が施設にショートステイで行くことになった時に、僕が車で送ることがあったんです。施設の前に着くと、職員さんが迎えに出て来てくれるんですけど、そこで孫の僕には見せたことのないような素晴らしい笑顔で「また来たよ~」って言って、職員さんとの間にとても温かい雰囲気が作られるのを見て衝撃を受けたんです。こんなに自分の祖母を笑顔にしてくれる、こういう崇高な仕事があるんだな、と初めて肌で感じたんです。それがきっかけになって、たまたま「無資格・無経験可」と書いてある施設の募集広告を見つけて応募したら、「あなたは優しそうだから」(笑)と言われて採用されたんです。

介護職をされる中で、介護福祉士資格を取ろうと思われた経緯を教えていただけますか。

【施設勤務時代の安東さん】
作家・介護福祉士 安東 茂樹さん
※写真は許可を得て使用しています。

 こんな素晴らしい仕事があるんだ、と思って入った施設の現実は、期待感が大きかっただけにやっぱり凄かったんですよ。3日目にして辞めようと思ったほど絶望を感じたんですね。そんな中で、お年寄りの笑顔や「ありがとう」という言葉に支えられて辞めずにいたんですね。3年経って受験資格が得られた時には、このまま続けるのかどうか正直悩んでました。悩んでいた時に、お年寄りから「あなた、ここにずっと居てくれるの?」って言葉をかけられたんです。もしずっとここで仕事をするんだったら、責任を持ってここに居るためには、資格は必要なものなんだ、と思ったんです。仕事をする上の免許というような意味だけじゃなくて、メンタル的に利用者やそのご家族に対しても安心を与えられる、責任を持てるっていうような意味でです。

その後、介護主任になられましたが、その時はどんなふうに思われていましたか。

 主任になってから改めて思ったんですが、自分が施設に入って3日目で辞めたいと思ったり、ずっと悩んだり苦しみながらやってきた時期があったから、同じような思いを持っている若い職員や実習生たちの気持ちが理解できるってことに気がついたんです。自分が主任になった意味っていうのがわかった気がしました。よく神様や何かの「導き」でこうなった、みたいなことを言われることがあるんですが、僕も本当にそういう気持ちになったんです。人間にはそれぞれ役割があって、自分にはこれなんじゃないかっていうような。それからは、実習生たちと話をするのがすごく楽しくなりましたし、職員たちと一緒に悩むことができるんだな、と思いました。お年寄りの苦しみっていうのも、自分が施設介護の在り方に疑問を感じたから、お年寄りが今、施設に居て何を辛く思ってるんだろう、ってことがわかるようになれたのかなと。主任のようなリーダーっていうのは、ポジティブでいなきゃいけない立場なんだと思うんですけど、ネガティブを知る必要があるってことをすごく実感したんです。ネガティブに感じることを、みんなで話し合ってポジティブなことにしていこう、って思ったんです。

介護職に何が一番大切だと思われますか。

 やっぱり職員と利用者の関係っていうのも、最後は人間関係なんじゃないかと思うんです。いくら知識や技術があっても、それを使う「意味」を考えられないとだめなんじゃないかと思うんです。まずは人の幸せとか、人が何を思っているのか?ってことを考えられるようになった上で、知識や技術は勉強すればついてくると思うんですね。実習生にはいつも、「優しい」職員になってほしいって言ってきました。「優しさ」の定義はないですけど、自分なりに「優しい」を意識して試行錯誤してくれればいいのかな、って思います。
職員と利用者の間では、当然トラブルも起こるんです。でもトラブルを避けるために、人間らしい関わりを否定するのはよくないと思うんです。たとえトラブルが起こっても、それは人間関係なんだから、真剣にそのお年寄りと向き合って問題解決する必要があるんです。本気で関係修復しようとする「真剣さ」が大事ですね。

このたびは小説を書かれて、介護職を離れられましたが、今後何を目指されているんでしょうか。

作家・介護福祉士 安東 茂樹さん

 僕も人間ですから迷ってるんです。(笑)
まず主任を辞めようと思ったのは、5年ほど主任をやってきて、若い副主任や職員がどんどん力をつけてきてくれたんですね。僕が主任でいるから遠慮もあるだろし、僕がいなくなったら、もっと力を発揮するだろうな、もう引退だ引き際だな、って思ったんです。もちろんその後、相談員になるっていう選択肢もあったんですけど、正直、自信がなかったんです。僕は「老い」も「死」も肯定してるような価値観があるので、そんな自分の思いや感情を持ちながら、どう冷静に現実的に施設としての説明責任を果たすのか?ってところで自信がなかったんです。本を書くことは、身勝手かもしれないですけど、自分の考えや葛藤を表現できる。みんなが考えてくれるような問題提起をできるのは、やっぱり本を書くことなんじゃないかな、って思うんです。死生観のようなものですけど、「生きる」ってことと「幸せ」ってことをみんなで考えるきっかけになればと思うんです。

たしかに、私も「潮風の行方」を読んで、人の命や生き方について考えさせられました。介護の仕事をされているいないにかかわらず、多くの人、特に若い人に読んでもらいたい本だと思いました。今日はお忙しい中、ありがとうございました。



(インタビュアー:ジェイシー教育研究所 堀 洋一)